保育士試験実技試験の準備【概論・音楽・言語】
保育士試験も筆記試験に合格すると一安心。
でも合格通知が届いてから約2か月で、実技試験日がやってきます。
筆記試験に比べれば用意が少なくてすむし、合格率も格段に上がる実技試験。
巷では8割が合格するものと言われています。
だからといって油断は禁物。
なんの準備もせずに痛い目にあった‥という話もよく聞きます。
筆者も受験最中、隣に座っていた方がそのお知り合いの方に、「ピアノ1週間でなんとかなるって思ってたんだけど、緊張しちゃって全然だめだった‥今回は無理な感じがするよ」などとお話されていたのを横で聞いておりました。
そこで、今回は実技試験の準備について綴りたいと思います。
実技試験の目的
実技試験については明確な評価手法が公表されていません。
受験を申請するときに取り寄せる「受験申請の手引き(平成30年度用)では、
「保育所保育指針「保育の内容」の5領域における「ねらい」及び「内容」を達成するために、保育士として実践上必要な知識、技能、資質の観点から評価します」
と記載されていますが、これでは具体的に何が評価されるのか分かりません。
なので、「声が大きければ加点」とか「ピアノの技術が上手だったら加点」とか、何が加点事由で何が減点事由であるのかは、推測するしかありません。
そこで評価手法の推測のきっかけになるのが試験の目的です。
なぜなら、【試験の目的】は、【試験によってどのような人物を保育士として見極めたいのか】という観点から決められているからです。
したがって、【試験の目的】に合致したパフォーマンスを試験官に見せられれば、実技試験もパスできるというわけです。
そこで【試験の目的】について探してみると
厚生労働省が発出している「保育士試験の実施について」という通知(全国保育士養成協議会のHPにUPされています※こちら)では、【実技試験】は、
「保育に関する教科全体の知識・技術を基礎とし、子どもの保育及び保護者への支援について総合的に理解し、実践する応用力を問うことを基本とする」
とされています
これだけでは「?」ですが
要は
あなたは子どもの心身の育ちを援助する保育士として、子どもにとっても保護者にとっても十分信頼できるような人格と資質をそなえた人ですか?
ということを問われているのだと、筆者は独自で理解しています。
保育士は、保育に関する知識だけ備えていればその職務を全うできるというものではないと思います。
生身の子どもを相手にし、個々の家庭に合わせて保護者と信頼関係を築きながら子どもの発達を援助していかなければならない。
もちろん大変なことも辛いと感じることもある。
だけど、「子どもを愛する」という大前提の感情と、「子どもを第一に考える」という基本的な理念をもって、毎日の保育にあたることを忘れてはならない。
この人は、その考えがある人だろうか。
それが「歌い方」や「話し方」や「絵」に現れているだろうか。
これが、筆記試験とちがい、直接面接官が個々の受験者を見ることができる実技試験で一番問われていることなのではないかと思います。
つまり、実技試験=面接試験と思えばいいのです。
なので、もちろんそれぞれの試験に見合う最低限の技術は必要だとは思いますが
ピアノも絵も、その技量はほとんど問われていないのです
難しい楽譜を弾いたって、淡々と仏頂面で歌っていれば評価は低いし
簡単な楽譜だって、笑顔で子どもに向けて楽しそうに歌っている様子を見せられれば評価は高い
そう試験官が言ったわけではありませんが、筆者は実際の受験経験から断言できると思ってます。
そうすれば、準備すべきことはおのずと決まってきます。
音楽表現に関する技術の準備
楽 器 選 び
音楽表現はまず楽器選びから始まります。
楽器の指定は
- ピアノ
- ギター
- アコーディオン(独奏用)
のいずれかです。
ギター・アコーディオンを選択した場合は、楽器を持参する必要があります。
たいていの方がピアノを選択されると思いますが、試験会場にはギターを持参されている方もいらっしゃいました(30人くらいの待合室に1人ギターの方がいたかいないか‥という感じでした)。
いずれの楽器も使ったことはないが、やむなく音楽表現を選択したという方の場合には、ギターやアコーディオンは技量が必要になりますので、ピアノを選択するのが最も良いのではないかと思います。
楽 譜 選 び
【簡単なものを選ぼう】
ピアノを前提とした選び方ですが、
楽譜は多くの方が言われている通り簡単なもので大丈夫です。
「簡単なもの」とはどのレベルかというと、
右・左それぞれ和音のない単音だけでも、両手があればOK
という水準だと思っています。
それよりなにより大切なのは笑顔と声の大きさ・楽しく歌う雰囲気です。
ちなみに私は、幼児~大学までピアノを続けていました。
なのでピアノには自信があり、自分もちょっと凝った曲を弾きたいと思ったので
少々難易度が高めの楽譜を選びました。
これが、ピアノが得意だと公言していながら対して点数が伸びなかった(39点)大きな要因だと思います。
当日の緊張は想像を超えるので、ピアノの速度も速くなり、手も思うように動きません。
難しい楽譜を選んだ私は、ご想像通りピアノを派手に間違えました。
でもとにかく「笑顔」「楽しく歌う」だけは忘れずに、間違えても止まらずに歌い切りました。
それでなんとか合格点をもらえたようなものだと思います。
その結果を見ても、問われているのはピアノの技量ではなくて、歌い方やそこから感じ取れる保育士としての雰囲気なんだなあと実感しました。
実技試験当日の様子についてはまた記事にしたいと思いますが、ここで一番申し上げたいことは
人前で弾いたり歌ったりすることに慣れていない(緊張する)方は、極力簡単な楽譜を選ぶことをおススメしますということです。
(もちろん、人前で弾いてもいつもの実力が出せます!という方はもちろん相応の楽譜を選んでいただくことでよいと思います。私のように人前で緊張しがちな方は要注意、と受け取ってください)
【移調に気を付けよう】
試験では移調も可能です。
原曲が黒鍵ばかりある難しい調であれば、簡単な調に移調したバージョンの楽譜をおススメします。あるいは、自分の声の高さで歌いやすい調の楽譜という観点も大切です。あまりに高かったり低かったりすると歌い方も苦しくなってしまいます。
【楽譜を見やすくファイリングしよう】
楽譜を選んだら、練習や試験当日に見やすく出しやすいよう、厚紙などに貼りましょう。課題2曲を厚紙の裏と表に1曲ずつ貼るようにしておくと、試験当日も1曲終わったら裏返せばすぐ次の課題曲が出るので便利です。
私は、(難しい楽譜を選んでしまったため)楽譜が1曲2枚あったので、文書を綴じるファイルを使いました。ファイルを開いて、A3くらいの大きさにして、そこにベタっと楽譜を貼る感じです。
いずれの方法でもご自分の使いやすい方法でいいと思います。
ただ試験官に楽譜も見られますので、心象として綺麗にこざっぱりしておいた方がいいと思います。
うすい紙の楽譜をそのままペラペラさせてピアノに置けば、楽譜にしわがよったり少しの風で落ちたりします。
子どもの前で弾き語りをするのにその状況はナンセンスです。
何度も述べますが、「実技試験=面接試験」です。
この人は保育士に向いているのかな?という目で一挙一動見られますので、細かいかもしれませんがその点も意識しましょう。
事 前 練 習
「1週間前くらいからはじめたわ」なんて方も見かけますが
声高に申し上げます。筆記試験の合格通知がきたらすぐに準備と練習を始めましょう。
ピアノは慣れです。当日の緊張の中、指は無意識に動くくらいのレベルにしておかないと、間違えたときにパニックになります。
私が事前の練習で行ったのは、
- ネットの動画を参考にする
- 毎日5分くらいは練習する
- 自分の弾き歌いを録音して聴いてみる
の3点です。
【ネットの動画を参考にする】
今は便利なもので、インターネットで情報を十分に得ることができます。
ピアノを教えている方が課題曲の弾き方見本をアップしておられたり、試験経験者がご自分の弾いた楽譜を動画で紹介されていたり‥。
これらを見本とすれば必ず受かるというわけではありませんし、インターネット上の情報はどれが正しいか自分で取捨選択する必要がありますが、自分の弾き方で試験を迎えていいのかどうか不安に思ったときの参考材料になると思います。
【毎日5分練習する】
先ほども述べましたがピアノは慣れです。
短期間の練習で弾けるようになっても、無意識に指が動くレベルにまではいきません。
試験当日は、家での練習と比べものにならない緊張と雰囲気があります。
その中で歌や笑顔に集中しできるよう、指はピアノに慣らしておくべきです。
また、私は自分の家にピアノがあるので毎日ピアノで練習できましたが、ピアノがないという方もおられると思います。
毎日の練習はもちろん電子ピアノで大丈夫ですが、実際のピアノは電子ピアノより鍵盤が重く、音も大きいです。
なので、「鍵盤が弾きづらくて失敗した」「音が思いのほか大きすぎて自分の声が消されてしまった」などといった声もちらほら。
毎日の練習のほかに、試験が近づいてきたら実際のピアノを触って練習する必要もあります。
知り合いにピアノを持っている人が居らずピアノに触れないという場合は、ピアノがある公民館やスタジオも多くありますので利用してみられてもいいと思います。
【自分の弾き歌いを録音してみる】
これはおすすめです。
自分が弾き歌いしているときに耳に入ってくる自分の歌い声と、録音したものを冷静に聞いたときの自分の歌い声は全く違います。
意外にすごく早く歌ってたり、声がピアノに消されて小さかったり‥
いろいろな改善点が見つかると思いますので、試験が近づいてきたらぜひやってみてください。携帯の動画で録音すれば十分だと思います。
言語表現に関する技術の準備
筆者は言語表現を選択してい、実際に自分が言語表現を選択し受験するとしたらどのように準備するか、という視点から述べたいと思います。
課 題 選 択
言語表現では、事前(受験申請時)に課題が提示されています。
平成30年度に提示された課題は以下の4つです。
- 「おむすびころりん」(日本の昔話)
- 「3びきのこぶた」(イギリスの昔話)
- 「3びきのやぎのがらがらどん」(ノルウェーの昔話)
- 「てぶくろ」(ウクライナ民話)
この4つから1つを選択します。
当然どれを選択しても評価に影響はないと考えられますので、第一義的にjは
自分がどれが好きか
という視点で選べばいいと思います。
自分が好きな話であれば表現も豊かになるし、万が一用意していた話の筋を忘れてしまっても、その場で加工してなんとか繕うことも可能でしょう。
もう1つの視点は、登場人物がそれぞれ違う性格で数も多くないということでしょうか。
なぜかと言えば、当日は絵を使うことはできないので、声色だけで登場人物の違いを表現しなければならないからです。
同じような性格・同じ種類の動物の登場人物が何人も出てくると、その差を声だけで表現することは難しいですよね。
筆者がもし課題を選択するのであれば、登場人物の性格がそれぞれ多種多様で異なっていて表現しやすいか、登場人物そのものが少ないかという視点で選ぶと思います。
お 話 作 成
課題が決まると、試験当日に話すお話づくりを始めます。
お話づくりも、
「概要の大筋をきめておいて、細かい言い回しなどはそのときに考えながら話す」というやり方と
「一字一句決めておいて記憶し、暗記したものを当日話す」
というやり方があると思います。
これはどちらがいいという問題ではなく、受験者の個性によると思います。
カチッときめておくと忘れてしまったときに融通が利かない、自由に表現の余地を残しておいた方がいいと思えば前者の【概略スタイル】をとればいいし、丸暗記しておかないと当日どもってしまったら不安と思えば後者の【丸暗記スタイル】をとればいいと考えています。
大事なのは、その話によって試験の要件を満たせるか です。
試験の要件(平成30年度現在)とは
- お話を聞かせる対象は3歳児クラスの子どもが想定されていること
- 3分間で終わらせること(短すぎても×)
- 子どもが集中して聴けるようなお話を行うこと
の3つです。
そのため、内容が年長さん並みに難しすぎても印象が悪いと思われますし、周囲の話を聞くと「3分よりはるか前に話を終えてしまった・3分を超えてしまった」場合も減点対象となるようです。
試験に受かるためのお話を作る必要がありますので、この点に注意を払う必要があります。
練 習
お話を作成したらあとはひたすらに練習です。
3歳児の子供が椅子に座っていることを想定して、目線もそちらに合わせながら本番さながらに練習しましょう。
この場合にも笑顔と明るい雰囲気を忘れずに!練習で笑顔を作ればければ、本番では緊張して笑顔どころではなくなります。
回数をこなせば自分の話し方も一定になり、安定して3分で終えるようになるはずです。
また音楽表現と同じで、緊張する中でも無意識に口が動くレベルにしておいた方が試験中にそのほかの加点事由(笑顔・礼儀・子どもへの配慮をしていますよという表現)に気を配ることができます。毎日少しずつ練習を重ねていくことが合格への近道だと思います。