ママモスタディ

子どもが嘘をついたとき、どうする?

初めて聞いたけど「私それ知ってる」

自分が壊しちゃったけど「僕は壊してない」

 

こどもの「うそ」。

幼児期になると子どももチラホラと嘘をつくようになり

ほほえましい嘘から、困った嘘まで

内容も様々です。

 

事実ではないことを自分で想像して表現する、という意味では

成長の1つであろうとは思われるのですが

その内容によっては親も対応を考えなければならないものがあります。

 

子どもはどういうとき嘘をつくのか

保育者の対応はどのようなものが考えられるのか

見ていきたいと思います。

 

f:id:studym:20190105002322j:plain

 

嘘の種類

こどものつく嘘の種類は、心理学で細かく分類されていますが

大体代表的なものを挙げてみると次のようなものがあります。

①ファンタジーの嘘

  • 「このまえ白雪姫に会ってね、いっしょにハイホーハイホーしてきたの」
  • 「いま電車にバイバイしたらね、電車がバイバイって言ってくれたんだよ」

②快楽のための嘘

  • 【からかい】「オオカミが来たぞー!」と言って周りが驚き慌てるのを見て面白おかしく思うもの
  • 【見栄】「ウチにはゲーム機が10個もあるんだぜ」

③得するための嘘

  • 【消極】(花瓶を壊したが)「花瓶を壊したのは僕じゃない!」
  • 【積極】(元気だが学校を休みたいので)「頭が痛い、熱があるみたい」

④他人のためにする嘘

  • (花瓶を壊したのは弟だが弟をかばって)「花瓶は僕が壊したんだ」
  • (本当は一番先にやりたいけれど)「私は最後でいい」

 

「気にならない嘘」と「気になる嘘」

 

 

 気にならない嘘

親が言われても気にならない嘘は、①ファンタジーの嘘でしょう。

言葉が発達し長い文章を話すことができるようになってくると、想像力も豊かになり子どもの中でつくられたファンタジーの世界を、親に「きいて、きいて」というように話してくることがあります。

客観的に見れば「いやいや嘘でしょ」と言いたくなるような話でも、だれかを騙したいというわけではなく、嘘により得したいというわけでもなく、

単に自分の空想の世界を述べているだけであるため、その姿は微笑ましく、

親も「そうなのねそうなのね」と顔を緩ませながら聴くことができる「うそ」であるといえます。

 

また、④他人のためにする嘘も、親は不快には感じない嘘です。

誰かを喜ばせようとするための自己犠牲を伴う言動は、特に日本では美徳に見えます。

なので、このような嘘があったとき「えらいね」という賞賛の言葉がかけられがちです。

ただし、後述のとおり、この嘘が「他人に褒められたい、よく思われたい」という思いから発せられているのであれば、親は注意が必要です。

 

 気になる嘘

親が気になる嘘は②快楽のための嘘と③得するための嘘でしょう。

 

②快楽のための嘘については

オオカミ少年のように相手に嘘をついて信じさせからかうにしても、

自分はすごいんだぞ、と虚構を並び立てるにしても、

自分に優越感を感じて楽しみたいという目的は同じで

いずれにしても「根性がよくない」という印象を与えるので

親としては子どもがこのような嘘をついていると

「どうしてそんな嘘をつくの」と言いたくなるものでもあります。

 

③得するための嘘については、子どもの誠実さや正直さといった生き方自体に影響を与えるものであり、親も看過できません。

「僕が花瓶割ったんじゃないよ」と消極的に嘘をつくことによって自分の責任を逃れること。

「体調が悪い」と積極的に嘘をつくことにより自分の都合のいい結果を求めること。

いずれも正々堂々と立ち向かうべき課題から、嘘により逃げていることになり

親としては「逃げるな!嘘をつくな!」という態度で接してやりたくなるものです。

 

もちろん、このような嘘が子ども時代にまかり通っても、大人になって困るのは子ども自身であるので親も毅然と対応する必要がありますが、ただこの嘘は

「自分を守りたい」という欲求からきているものであるということに注意しなければなりません。

 

嘘をつかれたとき親はどう反応するか

f:id:studym:20190105011559j:plain

 

結論は、親は反応しないことです。

 

逆に、反応したときのことを考えてみましょう。

 

 嘘に合わせてあげる

コーチングにおける子どもの接し方の大原則の1つは、「子どもを受け止めてあげる=承認してあげる」ことです。

それでは、嘘をつく子どもに対して、その嘘自体も受け止めてあげる必要があるのでしょうか。

①ファンタジーの嘘であれば、「そうなのそうなの」と合わせてあげることが求められます。子どもが想像の世界を広げている最中に、「嘘でしょ」なんて腰を折ってもその想像意欲を後退させてしまうからです。

一方、

「この前ね、〇〇ちゃんが私に髪ゴムくれたの。あと〇〇くんは私にハンカチくれたの。いろんな友達がいろいろくれるんだよねえ」

なんていう②快楽のための嘘(自分を飾り立てる虚言)についてまで

「へえ、そうなの!すごいねえあなたはいろんな人から好かれてるんだね」

なんて合わせてあげる必要があるでしょうか。

 

それで子どもの自己顕示欲が満足され、そのあと嘘をつかなくなることが期待できる、といえるでしょうか。

 

答えは否です。

 

なぜなら子どもが嘘をつくのは、嘘によりいいことがあるからです。

嘘をつくことによって、親が自分の評価を上げてくれる。

それは子どもにとって「いいこと」です。

なので、虚構の飾り立てに合わせてあげることで、子どもは「飾られた嘘の自分」に快楽を感じ、さらに飾り立てることを重ねていく可能性もあります。

 

「嘘に合わせる」ことは「子どもを受け入れる」ことではないのです。

 

 嘘を否定する

「花瓶を割ったのは僕じゃない」

これを真っ向から否定するとどうなるでしょうか。

 

「何言ってるの、この部屋にあなたしかいなかったんだからあなた以外に誰が割るというの」

「違う、僕じゃない」

「嘘をつくのもいい加減にしなさい」

「違う、僕がこの部屋にきたときにはもう花瓶は割れていたんだ。僕じゃない」

 

結局、嘘に嘘を重ねることとなります。

ここにアイルランドの随筆家・スウィフトの有名な言葉があります。

「1つの嘘をつく者は、自分がどんな重荷を背負い込んだのかめったに気づかない。つまり、1つの嘘をつき通すために別の嘘を20個考えなければならない。」(「断片」より)

 

重複になりますが、子どもが嘘をつくのは嘘によっていいことを得たいからです。

それは究極的には、自分を守りたいという防衛欲求からくるものです。

自分を守るための嘘を否定されれば、さらに嘘を重ねて守る行動に出るのは当然のことです。

その結果、親が根負けして「もういいわ」となればしめたもの。

嘘によって得をする(=責任を逃れる)ことを学びます。

反対に、「わかったよ嘘だよ」と子どもが白旗をあげれば親は「そうでしょう言った通りでしょう」と満足。

一方子どもは嘘を暴かれ自分を守れず、傷を負った状態で終わります。

どちらにしてもいい結果ではありません。

 

 反応しない

そこで、「反応しない」という選択肢があります。

 

つまり「嘘に取り合わず、自分(親)の意見を言う」ということです。

 

花瓶の例でいえば

「違う、僕が割ったんじゃない」

「へえそうなの。私は花瓶が割れてとても悲しい。大事にしていた花瓶だから、もし割った人がいるのなら次は気を付けてと言いたい」

これで終わりにしてしまいます。

自分を守る嘘をつける年齢であれば、この空気感で、「親が自分が割ったと気づいている」と感じることでしょう。

それでも怒らず嘘を責めないことで、自分を守るという子ども自身の目的は達せられています。

 

また、自分を飾り立てる虚言についても

「ぼくゲーム機10個もってるんだ」

「へえそう」

「すごいね」と乗らないことで、子どもは嘘をついても優越感を得ることはできないことを知ります。

また、「そんなの嘘でしょ」と否定しないことで、そのプライドを折る結果にもなりません。

 

一方、「熱があるみたい」という嘘についてはどうでしょう。

このような嘘の中には、その根底に「学校に行きたくない」「習い事にいきたくない」などといった深刻な悩みが含まれている場合もあります。

その場合にまで定型的に「へえそう」で終わらせてはなりません。

「反応しない」というのは、「子どもの嘘に付き合わない」という意味です。

「嘘によって得をする」ことを学ばせないという趣旨です。

子どもが嘘をつくことにより守りたいものは何か、嘘をつく背景には何があるのか、

ということ考えずに単に「無視」という態度をとってしまっては、嘘以上の問題が引き起こされることもあります。

そのため、このような場合には

「そうか、大丈夫かな。」と受け止めてあげてぎゅっと抱きしめてあげ

話をよく聞き受け止めてあげ

「嘘」ではなく「根底の悩み」を共感し、その先の話をしていく必要があります。

 

嘘をつかなくてもすむ環境に

f:id:studym:20190105025728j:plain

子どもが嘘をつく背景は

「正直に言ったら自分は損をする」

と考えていることにあります。

「自分が花瓶を割ったと言ったら怒られる」

「みんなに好かれていない自分だと親が褒めてくれない」

「熱があるとでも言わないと、学校を休みたい気持ちを分かってくれない」

「オオカミが来たって言わないと、自分に振り向いてくれない」

 

そんな思いから、自分を守るために嘘が出てしまうのです。

 

そうであれば、

「大丈夫、怒らないよ。」

「大丈夫、ありのままのあなたを愛しているよ」

「大丈夫、正直に言ってごらん受け止めるよ」

普段からそんなサインを出すことによって、

子どもも嘘をつく必要性を感じなくなるのではないでしょうか。

 

また、親がむやみに嘘に反応せず

嘘をついても何も得をしないということが分かれば

正直に生きることの爽快さを覚え

大人になって、社会で誠実に生きていくことのできる土台を作ることができるのではないでしょうか。

 

そしてもう一歩別の視点を見れば、

親が普段から嘘をつかないこと。

たとえ些細なことであっても、子どもに正直に接すること。

(お菓子をこっそり食べたところ、「今何食べたの!?」→「な、なにも食べてないよ」レベルのものでも・・)

 

子どもは親を見ています。

大人が嘘をつけば、その嘘が日常的になり、子どもが平素から嘘を口にする原因になるかもしれません。

 

自重の意味もこめて、正直に生きることの楽しさを

親子で味わっていけたら…と思います。