子どもへのコーチング~自分で問題を解決できる・自分で人生を選択し歩むことができる人間に育てるために~
育児をして悩みが出ると、ついつい検索に使うスマホ。
「ほめる子育てがいい」
「叱ってはいけない」
「子どもがほしがれば卒乳しなくていい」
「良質な睡眠のためには夜間泣いても抱っこしない」etc...
膨大な情報が錯そうする中、私はどの情報が正しくてどの方法を実践するのが自分の目指す子育てに合致しているのか、判断することができませんでした。
そんな中出会ったのが
「コーチング」の本。
子どもに対する「コーチング」に関する本は、日本ではまだ数が多くありません。
私は本が好きなので、育児に関する本はいくつか読み漁ったのですが
その中でこの「コーチング」に関する書籍については、とても心打たれるものがありました。
そう!!それ!!!
という感覚があったのです。
もっとコーチングの知識を深めたいと思い、コーチングに関する技術の書籍や資格取得に励みました。
そのうち、コーチング技術が基にしている心理学やカウンセリング技術などにも興味が湧くようになりました。
でも、子育てをしていて日常的に「心理学」や「カウンセリング」を意識しながら子どもに接する・・なんてことをしているお母さんお父さんはそう多くないと思います。
お母さんお父さんが専門的な技術や助言を必要とするのは、きっと悩みにぶちあたったときです。
イヤイヤ期どう接すればいいの?
上の子の赤ちゃん返りがひどい…
子どもが嘘をついてしまう。
お友達に乱暴してしまう!
など。
そういうとき、巷に氾濫している情報をもとに行動しても
うまくいかないことがあると思います。
でも、「子育てコーチング」という一本の柱をしっかりと築いて
自分の子育ての軸を定めれば
子どもが投げかけてくる難問にも
「こういうときどうすればいいの!?」とネットサーフィンする必要もなく
自分で答えを導き出せることができます。
そこで、私も自分が育てられた時の経験や、自分が子どもを育てている経験を交えながら、子育てで発生する悩みに「コーチング」技術を取り入れて対応したらどうなるか…ということを、1つ1つご紹介していけたらと思います。
前置きが長くなりましたが、各論のまえにこの記事では「コーチングとは何か?」というところから始めさせていただきます。
「コーチング」とは何か?
「コーチ」という単語が入っていることからお察しがつくと思いますが
簡単にいえば
「コーチ」が対象者をサポートし、その成長を促すことを「コーチング」といいます。
でも「コーチ」というと
部活動やスポーツなどで呼ばれている「コーチ」の存在が真っ先に頭に思い浮かびます。
そして私の経験では、「コーチ」はご自身の経験や知識をもとにして、生徒である対象者に対して指導・監督をする存在。
その多くは「助言」や「指示」が生徒に与えられることにより行われる。
なので「コーチング」は「コーチ」から「対象者」への一方方向に行われるもの、というのが第一印象でした。
でも、いまビジネス界・医療・スポーツ界などで取り入れられている「コーチング」は、「コーチが対象者に指導する」という受動的な意味合いを一切持ちません。
世界的に合意された定義はなく、書籍等で言い回しは様々ですが、共通することは
「コーチングとは、対象者が自分自身で問題を解決する力を引き出してあげる援助技術」
であるということです。
重要なポイントは
- あくまで対象者(子ども)が自分で問題を解決するという形をとること
- 解決方法を自分で考えさせることによって、今の問題だけでなく、将来ほかの問題が生じたときに、自分自身で解決する潜在的な力を引き出してあげること
つまり、コーチングは
対象者(子ども)は、もともと直面した問題に対して自分なりの答えを導き出す力を持っている、ということをコーチ(親)が信じていることが前提になります。
そして、コーチ(親)はその力をうまく使えるように援助をする存在であり、「指導」や「教え」を与える立場ではないのです。
「コーチング」と「教え」の違い
たとえば、子どもがベランダの手すりに手をかけて、上るしぐさをしていたとします。
このときとっさに子どもを抱きかかえ、「手すりにさわっちゃダメだよ!」と言うとすれば、それは「教え(ティーチング)」です。
特に低年齢の時は、子どもの身に危険があるときや人に危険を及ぼすときなど、その場ですぐに言ったとおりに行動してもらわなければならない場合があります。
そのような場合には、「どうすべきか」具体的な指示を直接教えることが必要です。
ただこの場合でも、子どもが納得し理解していなければまた同じことをしてしまうかもしれません。
そのため、「ダメだよ」という教えを与え、まず安全を確保したうえで、なぜダメなのかを考えさせる必要があります。
子どもが自分で自分の身の安全を考え行動するようになるためには
「自分がこの行動をとったらどうなるのか」を考えることができる力が不可欠です。
そのためにも、コーチである親はこの機会について「手すりにさわっちゃダメだよ」という教えを与えるだけで終わらせず 、
【ベランダはどういうところなのか】
【手すりの向こうはどうなっているのか】
【手すりから身体が乗り出したとき、どうなるのか】
ということを、子どもと一緒に考えます。
ここでのポイントは、あくまで一緒に考えるということです。
これらの答えをすべて親が子どもに伝えていては、一方的に知識を付与する「教え」と変わりません。
自分で導き出した答えは、人から教えられたものに比べてストンと心の中に入りやすいものです。
そうすればこの場合の子どもも、「手すりの向こうを越えたら自分の身が危険なのだ。じゃあ、手すりに触らないだけでなく、寄りかかったりしてもいけないんだな」と、その先を想像し、自分で自分を律する力を身に着けていくことになります。
これが「コーチング」です。
子どもへのコーチングの効果
子どもへのコーチングは、親であるコーチ側に専門的な知識や教養を必要としません。
なぜなら、「こうしなさい」「ああしなさい」といった指示を与えるものではないからです。
指示を与えるということは、コーチ(親)が子どもよりも知識面でも経験面でも優位にたっていることが前提となります。
一方、コーチングは親が子どもに知識を付与するものではなく、
子どもが自分の力で問題を解決することをサポートするものであるため
「〇〇したほうがいいんじゃない」などと具体的なアドバイスは必要としません(むしろしてはいけません)。
したがって、子どもはコーチに言われるままにその場での問題を解決するのではなく
「そうか、こういう考え方もあるな」自分で気づく形で問題を解決することになるので
子どもが成長し、親が知っている・経験したことのある範囲を超えて活動を広げた場合でも、親の助言なくとも自らの力で問題を解決する力を持つことができます。
そうすることで、子どもは自分に自信をもち、自分なりに幸せな人生を選択し実行に移すということができる、「自立した人間」になることができます。
共働き世帯の増加、地域社会の希薄化などにより、子どもに対して課される課題は現代と昔ではその質が異なります。
昔であれば子ども同士が自然に集まり、その集団社会の中で自然に学んでいたことも、今は子ども同士で集まる場所も時間も機会も極端に少なくなったことから、家庭内でカバーしていかなければなりません。
その意味でも、コーチング技術を用いた子育てが現代に求められてくるものではないかと筆者は考えています。
子どもへのコーチングの方法
子どもへのコーチングは、
【聴く・共感する・承認する】
【質問する】
【行動する】
という枠組みで行われます。
コーチング理論の種類によってこの枠組みは様々ですが、いずれでも
【聴く】【質問する】【承認する】ことが重要であるとされています。
「聴く」というステップは、コーチングの中で最も大切とされています。
なぜなら、「聴く」ことによって特に親がアクションを起こさずとも、子どもは解決方法を導き出せることが多いからです。
あなたは、なにか人に悩みを話すとき「単に聴いてもらいたい」と思って話すことはありませんか?また、ただ聴いてもらっただけでスッキリし、「なんだそんなに難しく考えることでもなかったかな」と軽い気持ちになったことはありませんか?
人は能動的な生き物です。「聴く」という受動行動より「話す」という積極行動の方を好みます。しかも、未熟な子どもが迷っていることがあれば、親はついつい話を最後まで聴かずに口をはさみがちです。
それをぐっとこらえ、話を最後まで口をはさまずに聴いてあげるだけで、子どもは
「私を受け入れてくれている」と感じ、親の言うことも耳に入りやすくなります。
また、「私の話に共感してくれる」と感じるだけで、親子の信頼関係の基盤にもつながるでしょう。
話を聴いたら、コーチは子どもに質問を投げかけます。
これは単に「なんで?それは何?」という親の興味から出てくる質問ではありません。
あくまで、子どもが解決方法を導き出すためのサポートになる質問です。
例えば、保育園や幼稚園でお友達と喧嘩をしてしまったという話をされたとき。
「え、なんで喧嘩しちゃったの?」とまず聞きたくなると思います。これは、親が情報を得たいためにする質問です。
子どもを心配するがゆえ、聴きたいことを根掘り葉掘り質問したいという気持ちに無理もない親心ではありますが、常に「この質問をしたら子どもはどう捉えるか」を念頭におく必要があります。
「なんで喧嘩しちゃったの?」を投げかけられた子どもは、自分が全く悪いことをしていないと思っていればその考えを高々と話すでしょうが、自分に分がない喧嘩であった場合、守りに入って嘘をついたり黙ってしまったりするかもしれません。
この場合、まず呼吸を置いて「喧嘩しちゃったんだ」と繰り返してあげてみます。そうすれば、子ども自分からその理由を話し始めることでしょう。
そして子どもから「どうしても〇〇ちゃんのおもちゃが欲しかったからとっちゃったんだ」というような告白があれば、コーチングの質問を使います。
「そうか、欲しかったんだね。でも喧嘩したのは悲しかったね。喧嘩しないでおもちゃ使うにはどうすればいいかな?」
という具合です。決して、「とっちゃったの?それはいけなかったね」などと子どもの行動を評価してはいけません。
子どもにとっては、自分の話を受け入れてもらえた安心感を得、次はどうすべきか自分で考えられたことによる自信をもつことができる、という効果が期待できます。
コーチングの目的は、子どもが自分の力で問題解決を行うことです。
話を聴き、その存在を受け入れ、質問をして自分で考えさせてあげるという道筋を立てるサポートをしてあげたら、そのあとは子どもが自ら行動することが必要です。
その行動も「〇〇したらいいんじゃない」とコーチ(親)が指示してはいけません。
人は、他人から設定された目標は達成するやる気をもてないものですが、自ら設定した目標については実行にうつすモチベーションを高く持てるものです。
なので、コーチ(親)は子どもが主体的に行動できるようサポートしてあげる必要があります。
先ほどの例でいえば、
「喧嘩しないでおもちゃを使うにはどうすればいいかな?」という質問に対し
「一緒に使えばいいんだ」と答えたとします。
でも、おもちゃには一緒に使えないものも多くあります。そんなとき子どもに選択肢を与え、柔軟に行動できる思考の幅を与えておかなければなりません。
「それはいいね。仲良く使えたら最高だね。じゃあ、1人しか使えないおもちゃのときはどうする?」
「うーん…そういうときは一緒に使えないから、何分までは〇〇ちゃんって決めて順番にするしかないよね」
「そうだね、いい考えだと思うよ。やってみれたら、また教えてね」
ここでのポイントは、【自分で具体的な目標を設定したこと】と【コーチにまたフィードバックをお願いしたこと】です。
自分で出した案なので、コーチが見ていないところでもきっとその通り実践するでしょう。その結果うまくいこうとも失敗しようとも、またコーチのところにフィードバックしてくれれば、それも行動の一つです。そこからうまくいった解決手口を自分に定着させたり、あるいは新たな解決方法を考え直したりする糸口になります。
コーチング、いかがでしたでしょうか。
子育てに専門的な知識もスキルもない私にとっては魅力的な理論です。
「親である」だけで行うことができるスキルなのですから!
本に書いてある通り、理想通りにはなかなかいかないことも多いですが、失敗を繰り返しながらも子どもの人格を尊重するという気持ちで日々実践しています。
でもその本心は、「ちゃんと自立して、親離れ子離れした関係で私も老後を満喫したいわ」という希望からきているものなのかもしれません^^;。