子どもが「他人の気持ち」を想像できるようになっているか?お題を出してみる心理学「サリー・アン課題」―実践のための画像つくってみました―
産まれて授乳や排せつのお世話だけで大変だった子どもも、2歳ころになると自己主張が強くなり、おともだちとの触れ合いの中で、おもちゃの取り合いといったケンカも増えてきます。
自我の芽生え、自己意識の主張という面で大切な発達過程です。
でも、「自分の思いを主張する」という発達の次には
「他人の思いを理解する」というステップが待っています。
保育園や幼稚園にいき、小学校にすすむうえで、他人と集団生活をおくるために必要なステップです。
そうすると
子どもの精神的な発達の面、特に「社会性」について、親もだんだん気になってきますよね。
特に2,3歳児のおともだちとのケンカでは、たとえばおともだちのおもちゃを取ってしまったり、あるいは叩いてしまったりしたとき
「そういうことをしたらお友達はイヤだよ」
ということを分かってほしいというのが親心だと思います。
では、
「おともだち(=他人)はイヤ」
ということを理解できるようになるのはいつごろからなのでしょうか。
心理学において、「相手の気持ち」について推測するために必要な能力は
「心の理論」
と呼ばれています。
子どもが「心の理論」を習得する時期については諸説ありますが
有名な発達心理学者サイモン・バロン=コーエンが「サリー・アン課題」を用いた研究から、おおむね4歳ころには、「心の理論」を発達させ始めるとしています。
<サリー・アン課題>
サリーとアンの前に、バスケットと箱がある。
サリーがバスケットにボールをしまって立ち去る。
アンがボールを箱に移し替えて立ち去る。
子どもに以上のお話をしたあと、「戻ってきたサリーは、【バスケット】と【箱】どちらを先に探すでしょうか?」と質問する。
子どもが自分の認識(ボールは箱の中にある)と、サリーの認識(ボールはバスケットの中にある)を区別し、サリーの心の中を推測できると、「バスケット」と答えることができる。一方「心の理論」が未発達だと、自分自身の認識から「ボールは箱の中」と答えてしまう。
「他人の気持ちを想像できる」かどうかは、集団で生活を営むうえで重要なファクターです。
上述のとおりおおむね4歳ころから心の理論が発達し始めるとされていますが、個人によって差異があると思うので、年齢にとらわれる必要はないと考えます。
お子さんが、【あ、いま自分だけじゃなくて他人のことを考えてくれたのかな?】と思わせるような素振りがあったときなどに、ゲーム感覚でこの「サリー・アン課題」を子どもと一緒に考えてみても面白いと思います。
ただ、この「サリー・アン課題」は日本人になじみのない「バスケット」が出てきたり、なぜアンはこっそりボールを箱に移し替えるのかが納得いかなかったり…(5歳の長女に試してみたら、「アン意地悪じゃない?」という反応が。たしかに…)
なので、子ども仕様に創作し、子どもが想像しやすいように紙芝居仕様で作成してみました。
ひらがながよめるお子さんには自分で字を追えるように、ひらがな表記にしています。
ぜひ、お子さんと楽しみながらお試しください。
あくまで
「心理テスト」のための設題ですので
この設題で「ピンクの箱」と答えても、あるいは「わからない」と答えても、
実生活で人の気持ちを理解する行動をしていれば、きっと「心の理論」の発達が始まっているものと思います。
また、「ひきだし」と答えた場合でも
「それはどうして?」と聞いてみてもいいと思います。
お子さんの答えを聞いて、その心の成長におどかれるかもしれません。
ぜひゲーム感覚でお試しください。